揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「連絡ぐらいできんだろ?会えないにしても、メールなり電話なり。修学旅行から帰って来るのいつだと思ってんだよ?」


「金曜…だけど?」


とりあえず、今は距離を置きたかったんだ。

まどかさんが、俺達の仲を疑わなくなるぐらいまでの。


「まさかと思うけど、姉ちゃんの事遊びじゃねぇよな?」


それこそ、まさかの質問だ。

俺が、由佳と遊びなんかでつき合うわけがないのに。


疑われた事に憤りを感じながらも、その反面では、疑われても仕方ない事を自覚していた。


だけど、その理由を説明するワケにはいかないから……。


「遊びなら…すっげぇ楽なんだけどな」


思わず、本音が漏れてしまった。

何だかもう、苦笑いしか出てこない。


その時、


「おぉーい、給水終わりだぞー!」


と、グランドからキャプテンの公輝の大声が聞こえてきた。

気付くと、ベンチにいるのは俺らだけになっている。


「さ、急ごうぜ」


黒のファーストミットを手に取り、俺が慌ててグランドへ向かおうとした時。

俺の背中に、克也の不安そうな声が投げかけられてきた。


「信じて…いいんだよな?」


その切なそうな声が、俺の胸をギュッと締め付けてくる。

そのせいで、一瞬言葉がうまく出なくて。


「いいに…決まってんじゃん」


背中越しにそう答えるのが、今の俺の精一杯だった。
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