揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「弘登って呼んでくれればいいよ」


そう屈託なく笑う先輩は、同じ名前でも大翔君とは全然違っている。


年の割に幼く見える先輩は、明るくて優しくて。

例えるなら≪太陽≫って感じ。


私の彼氏の大翔君は、年より大人びていて、やけにクールで。

例えるなら、≪月≫だろう。


「純平の彼女の友達だったなんて、世の中狭いよな」


確かに、すごい偶然かもしれない。


私がここのバイトに入ったのも、今日1日だけの事で。

ましてや、奥の仕事とかしてたら先輩と顔を合せなかったかもしれなくて。


「なんか、運命感じない?」


そう言った先輩は、真っ直ぐに私を見つめてきた。

その視線にドキッとした私は、疚しさから思わず目を逸らしてしまった。


「言っときますけど、この子彼氏いますから」


冷たい口調で、沙希が先輩にそう告げた。

驚いて彼女を見ると、先輩を見るその視線もかなり冷たく感じて。


「やだなぁ。俺、別に口説いてる訳じゃないよ。ただ、運命感じるなぁって思っただけでさ」


だけど、沙希の視線も。

先輩は、あっさり一笑に付してしまう。


私の方も、運命とまでは思わないにしても、何かしら縁があるのかもって思ってしまったのは事実で。

慌てて、自分をたしなめた。
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