揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「取ってあげようか?」


ふいに背後から声を掛けられ、思わずビクッとなった。


驚いて振り返ると。

そこには、諒斗達ぐらいはありそうな背の高い男の人が立っていて。


その若い男の人は、じっと私を見下ろしている。


「えっ?い、いいんですか?」


もちろん、初対面の人。

でも、取ってくれるって言うなら…お願いしたかった。


「どの本?」


「あの緑色の表紙の、分厚いやつです」


そう答えると、彼はらくらくとその本に右手を伸ばして抜き取った。


「ピューリタン革命か。世界史か何か?」


そう言いながら、大きな手で掴んでいた本を私に差し出してくれた。


私は、反射的に手を伸ばして。

それを両手で受け取った。


「あっ、はい。課題が出てて……」


その本は、見た目よりかなり重くて。

これを片手で軽々と掴んでいた彼は、かなり握力があるんだろうな。


「中…学生?」


「……高校2年です」


確かに、私は童顔だってよく言われるし。

私服を着てると、よく中学生に間違われるけど。


いいかげん、年相応に見られたいよ。


「どこの高校?」


「緑ヶ丘です」


「マジ?俺、今年そこ卒業したんだよ!」


明るい茶髪の彼のテンションが、一気に上がった気がした。


今年卒業したなら、私の2つ上って事だよね?

こんなチャラそうな人、先輩にいたんだ。
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