揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「弘登先輩、俺もう部活行くんで一緒に行きませんか?」


いつの間にか沙希の隣まで足を運んでいた真吾が、2人の気まずい空気を破るようにそう誘ってくれて。


睨みつけるように先輩を見上げる沙希と。

そんな彼女を、冷たい視線で見下ろしている先輩。


先に目を逸らしたのは…弘登先輩だった。


「……分かったよ。由佳ちゃん、またね」


そう言って私に手を振ると。

先輩は適当な靴箱の上に自分のスニーカーを置き、真吾と共に体育館へと向かって行った。


残された私と沙希の間には、変な空気が漂ったままで。


私に背を向けたままの彼女に、何て声を掛けていいのか分からなくて。

その場でじっとしている事しかできなかった。


「ホント、由佳ってば隙だらけなんだからっ」


そう言って振り返った沙希は、何だか目が潤んでいるような気がして。

唇を噛みしめて、涙を堪えているかのようだった。


「ごめんね、沙希……」


咄嗟に、頭を下げながらそう謝った。


だけど、彼女の次の言葉に。

私の頭は、すぐにまた上がることになる。


「そんなんだから、諒斗に襲われちゃうんだよっ」


「沙希……?」


何で…知ってるの?
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