揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「由佳に用事?校門の前にいたなら、そこで声かければよかったじゃない」


「あそこで話せるコトじゃなかったもの」


尋ねる沙希に笑みを返すと、片山さんは私の隣に腰を下ろしてきた。

ゆるくパーマを当てた茶色い長い髪から、ふうっとフルーティな甘い香りが漂ってくる。


「諒斗の事で、話があるの」


真っ直ぐにこっちを見ながら、発せられた言葉。

その言葉で、私は瞬時に思い出していた。


私のせいで、諒斗と片山さんが別れたんだっていう事を。


それに気付いてしまったら、もう彼女の目を見るのがしのびなくなってきて。

自然と、私は視線を逸らしてしまっていた。


「心当たりがあるみたいだね、吉野さん?」


その言い方が、何だかすごくいやらしくて。

ますます、彼女の方を向けなくなってしまった。


「もしかして、諒斗に別れようって言われた事で由佳を恨んでんの?」


沙希の左手が、私の左肩をそっと包んで来た。

私を守ってくれるかのように、包む手にぎゅっと力を入れている。


「恨んでるなんて言ってないじゃない。ただ、納得いかないだけよ。私より吉野さんの方がいいっていう理由が分からないもの」


その口調から、明らかに彼女が私を見下しているのが分かる。
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