冬うらら 1.5
1月

01/11 Tue.-1

●1
 それは、一本の電話から始まった。

 メイが、家の掃除をしている時のことだ。

 更に正確に言うならば、9時ちょうどの出来事だった。

 1月11日。

 結婚した翌日。

 カイトは会社に出かけていて、この家にいるのは彼女ただ一人。

 電話が鳴った時は、ドキリ、とした。

 まだ全然、この状況に慣れていないのだ。

 カイトと一緒に暮らす、というのはこれが初めてではない。

 それ自体には免疫があった。

 だからと言って、電話が得意なワケではないのだ。

 彼の妻としての肩書きには―― まだ、ちっとも慣れていないのである。

 結婚2日目という事実もあったが、それ以前に、お互い知らないことだらけのまま、すごい勢いで結婚してしまった。

 時間がたてばたつほど、不安というものが押し寄せてくる。

 もし、人に『あなたは、彼とどういう関係ですか?』と聞かれても、その事実をうまく伝えられる自信はちっともなかった。

 しかし、電話が鳴っているからには、取らなければならない。

 ハルコかもしれないし、もしかしたらカイトかもしれないのだ。

 外から連絡をつける方法と言えば、この電話くらいしかないのだから。

 ドキドキしながら、電話を取った。

 相手もよっぽどの用事なのか、迷っている間中コールを鳴らし続けてくれたのである。

「もしもし…」

 緊張する声で、電話を取った。

『ああ、よかった…!』


 開口一番―― 受話器は、安堵の声をあげたのだった。

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