冬うらら 1.5
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カイトもそれに気づいたのだろうか。
はっと、身体が動いたのが分かった。
扉が開く。
「だからさぁ…そこの…」
そんな声が、開いた扉の向こうから聞こえてきた。
「でもよ…って、あ! 社長!」
乗ろうとしていたのは、男性社員2人。
入り口のところに立ちふさがるカイトを見つけるなり、声音が変わった。
本当に、彼は社長なのだ。
さっきの受付嬢の言葉もそうだし、今度もそうだ。
この会社の、一番上に座っている人なのである。
鋼南電気の会社社長としてのカイトに会ったのは、今日が初めてで。
だから、そんな風な現実を見ると、いままで分かっていたかのように思えて、実は自分が彼の立場というものを、全然分かっていなかったような気がした。
「次のに乗れ」
カイトが、社員に向かって言った言葉はそれだけで。
言うなり、彼の指が「閉」のボタンを押したのが分かった。
バタン。
相手の反応を見るまでもなく、再びエレベーターの扉は閉ざされた。
ああ。
メイは、この会社に来てしまったことを、激しく後悔した。
誰だって、恥ずかしいに決まっているではないか。
社長が女と一緒に会社内にいた、という事実だけでも、どんな噂が立てられるか分からないのに。
あの受付嬢には見られてしまったワケだから、もうその噂は止められないかもしれない。
これが、仕事場でなければ別にかまわないだろう。
二人の関係は、あくまでプライベートなことなのだから。
けれども、ここは職場なのだ。
勤務中に女性と会っていた―― かなり、聞こえが悪い。
ごめんなさい。
一回心の中で謝るのが精一杯だった。
エレベーターは、すぐに4階についてしまったのだから。
カイトもそれに気づいたのだろうか。
はっと、身体が動いたのが分かった。
扉が開く。
「だからさぁ…そこの…」
そんな声が、開いた扉の向こうから聞こえてきた。
「でもよ…って、あ! 社長!」
乗ろうとしていたのは、男性社員2人。
入り口のところに立ちふさがるカイトを見つけるなり、声音が変わった。
本当に、彼は社長なのだ。
さっきの受付嬢の言葉もそうだし、今度もそうだ。
この会社の、一番上に座っている人なのである。
鋼南電気の会社社長としてのカイトに会ったのは、今日が初めてで。
だから、そんな風な現実を見ると、いままで分かっていたかのように思えて、実は自分が彼の立場というものを、全然分かっていなかったような気がした。
「次のに乗れ」
カイトが、社員に向かって言った言葉はそれだけで。
言うなり、彼の指が「閉」のボタンを押したのが分かった。
バタン。
相手の反応を見るまでもなく、再びエレベーターの扉は閉ざされた。
ああ。
メイは、この会社に来てしまったことを、激しく後悔した。
誰だって、恥ずかしいに決まっているではないか。
社長が女と一緒に会社内にいた、という事実だけでも、どんな噂が立てられるか分からないのに。
あの受付嬢には見られてしまったワケだから、もうその噂は止められないかもしれない。
これが、仕事場でなければ別にかまわないだろう。
二人の関係は、あくまでプライベートなことなのだから。
けれども、ここは職場なのだ。
勤務中に女性と会っていた―― かなり、聞こえが悪い。
ごめんなさい。
一回心の中で謝るのが精一杯だった。
エレベーターは、すぐに4階についてしまったのだから。