冬うらら 1.5
□5
 階段を駆け下りた。

 途中の階で、エレベーターが止まっていたせいである。

 この階まで上がってくるのを、待ってなんかいられなかったのだ。

 何で。

 駆け下りながら、カイトは頭の中に疑問を飛び交わせた。

 何で、わざわざ会社まで訪ねてきたのか。

 それは、イヤだ、ということではない。

 そうではないのだ。

 そうではなくて、その理由をどんなに考えても、ばっちりはまるパズルピースが見つからないのである。

 あのメイが―― そんなに長い付き合いをしたワケではないが、とにかくあの彼女が、くだらない理由でわざわざ電話してきたり、会社に訪ねてきたりするとは思えないのだ。

 何か困ったことでも起きたのか。

 そう思うと、もう本当にいてもたってもいられずに、階段途中から踊り場まで一気に飛び降りる。

 ダダダダダッ!

 ようやく、一階まで駆け下りた。

 ゼイゼイと切れる息もそのままに、また走り出そうとした。

 さっきの電話の感じからすると、きっとこのビルの外にいるのだ。

 が。

 動きに急ブレーキをかける。

 上げた視線の中に、誰かがぱっと飛び込んで来たのだ。

 受付カウンターの前。

 そこから振り返るように、カイトの方を見ている存在が。

 間違いない。

 メイだ。
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