冬うらら 1.5

 後ろから、視線が追いかけてくるのを振り切るようにして。

 ひたすら、車を目指した。

 自分が運転席側に。

 メイが助手席側に乗り込んで、バタンとドアを閉める。

 はぁ。

 そんなため息を、同時に洩らした。

 彼女も、あの視線は落ち着かなかったのだろうか、と視線をそっちにやると、向こうもこっちを見ようとしていた。

 ばちっと視線が合う。

 二人―― 赤くなってしまった。

 な、何やってんだ。

 たかが、目が合っただけである。

 と、とにかく。

 カイトは、焦る頭を切り換えようとした。

 まだ、太陽は真上だ。

 メイは家に。

 そして、自分は会社に戻らなければならなかった。

「……送ってく」

 慌ててエンジンをかけながら、ぼそっとそう言った。

「あ、大丈夫…バスで帰れるから…カイトお仕事あるし」

 なのに、彼女はその申し出を断ろうとしたのである。

 その上、ドアを開けようとする素振りさえするのだ。

 あ。

 反射的に手が出ていた。

 そこに―― いて欲しかったのだ。
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