冬うらら 1.5

 確かに、まだ二人きりでいるということに慣れないことはたくさんある。

 居心地が悪いと言えば、そうだった。

 けれども。

 それでも。

 そこにいて欲しいのだ。

 帰るまでに彼女に何かあったら、などという言葉を理由にするよりも、何よりも、自分がそれを一番望んでいた。

 赤い顔で振り返るメイ。

「送る…」

 胸に。

 溢れるものはたくさんあるというのに、それしか言えなかった。

 だから、降りるな。

 そう願った。

 メイは、一瞬瞳の中を揺らめかせたように見えた。

 しかし、その後にゆっくり身体の向きを前に直したのである。

 彼の言葉を受け入れるように。

 ほっと。

 拒まれなくてよかったという安堵感が全身を包んだ。

 そして、ようやく手を離すことが出来た。

 車を走らせる。


 家まで―― もっと遠ければよかった。
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