冬うらら 1.5

 しかも、今度は前よりも強固な門番―― とは失礼か。

 親衛隊が、お相手なのである。

 ここを通らなければ、王様に謁見することは出来ないのだ。

 家のものですが。

 メイは、自分の鼓動にかき消されないように、頑張ってそれを言ったのだ。

『…失礼ですが、社長とはどのようなご関係でいらっしゃいますか?』

 ああ。

 目の前が真っ暗になった。

 ついにそれを聞かれてしまったのだ。

 答えなければ先に進めないのである。

 本当に家族のものなら、ここでためらったりするはずなどないのだ。

 母にしろ、姉にしろ妹にしろ、はっきりそう言えるのである。

 そう言えば、向こうはすぐ『申し訳ありませんでした、しばらくお待ちください』と言って、王に会うための扉を開いてくれるだろう。

 妻と。

 いまのメイは、はっきりとそれを言うことが出来なかった。

 しかし、言わなければ、電話はここで終わりである。

 冷たい汗が背中を流れた。

 唇が震える。

「あ…あの………つ………妻です」

 ご、ごめんなさい!!!


 メイは、見えないカイトに向かって、精一杯謝ったのだった。
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