冬うらら 1.5

 気を付ければ、大丈夫よね。

 そう思った。

 しかし、左手だけでいろんなことをするのは大変だ。

 身体を洗う時なんかに、いつも自分がどれだけ利き手に頼っていたかが分かる。

 ぎこちない洗い方になってしまった。

 かえって時間がかかる。

 ああもう。

 グズグズしている自分が腹立たしい。

 これでは、カイトの疲れを癒すどころではない。

 メイは、身体と髪を洗ったら、もうそのままバスタブにはつからずに、お風呂を上がろうと心に決めた。

 そうすれば、そんなに遅くなりすぎないだろうと思ったのだ。

 急がなきゃ。

 身体を泡だらけにしたまま、ふっと手を見ると―― カイトのケイタイ番号。

 それに、頬を緩めてしまいそうになった時。

 ガタン。

 音に、メイはびっくりした。

 脱衣所の方で、大きな音がしたのだ。

 え?

 振り返る。

 お風呂場と脱衣所の仕切は、すりガラスのドアになっているので、はっきり向こう側が見えるワケではない。

 しかし、シルエットは分かった。

 誰かが、その空間にいるということが。

 勿論、それはカイトに違いなかった。

 どうしたのかしら?

 振り返ったまま、メイはきょとんとそのシルエットを見ていた。

 すると。

 ばさばさっ。

 そんな音が聞こえてきた。

 そして、シルエットが何か大きな動きをしているのも。

 え?

 彼女の時が、一瞬止まった。

 そして、時は動き出す。


 え? ええー!!!!!?????


 服を脱いでいるように、見えたのだ。
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