冬うらら 1.5

 ま、待って。ちょっと待って。

 全身泡だらけのまま、メイは大慌てだった。

 もしかして、カイトはさっき彼女の言いかけてストップした言葉を、実践しようとしているのだろうか。

 一緒にお風呂に―― カァッ。

 全身が心臓になってしまったかのように、ドキドキに捕まってしまう。

 しかし、それを言ってから、随分時間がたっている。

 もしも入る気だったなら、もっと早く反応していたのではないだろうか。

 いや。

 冷静に考えよう。

 カイトは、ただ着替えたかっただけかもしれない。

 一緒にお風呂に入ろうなんて、思っていないかもしれないのだ。

 思い出してみたら、過去、そういう肩すかしが何度もあったではないか。

 カイトはしゃべらない人なので、うっかり彼女は誤解をいっぱいしてしまったのだ。

 だから今回のも、後からよく考えてみればいつもの誤解で、『私のバカ』と自分に言ってしまう程度の出来事なのかもしれない。

 そうよ。

 きっと、そうに――

 メイは、止まった。

 すりガラスのドアの向こうに。

 カイトが立ったのだ。

 その肌のシルエット。

 彼が。

 カイトが。

 服を着ていない何よりの証拠。

 その腕が。


 動いた。
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