冬うらら 1.5
□13
 そこを去りがたく、ついついカイトはドアに背中を押しつけたまま、グズグズとしていた。

 別に、着替えをしている音を聞きたいとか、そういうことではなかった。

 風呂、という日常の義務のような作業に、彼女を奪われてしまったことが悔しかったのだ。

 再びメイが、このドアを開けて出てくるまで、カイトは一人で時間をつぶさなければならないのである。

 仕事をすることだって出来た。

 開発の仕事は、山ほどあるのだ。

 机に置いてあるノートパソコンに電源を入れ、ネットをつなぎ、仕事をすればいいのである。

 しかし、まだそれに落ち着いて向かい合えないような気がした。

 早く彼女の存在を、空気のようにしてしまわなければいけない。

 でないと、本当の日常生活を送っているという気にはならないだろう。

 なのに、本当にそんな日が来るかどうか、まったく彼には分からなかった。

「あの……」

 そんな彼に、ドアの向こうが声をかけてくる。

 メイの方も、まだそんなところでグズグズしているのだ。

 早く入れと、もう一度言おうとしたが、それよりも彼女の言葉の方が早かった。

「あの……よかったら、一緒にはいりま……あっ!」


 あぁ?


 一緒にはいりま――?


 はいりま――?
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