冬うらら 1.5

 素肌の、首、肩、腕、背中。

 メイは、驚いてしまって、ついマジマジと彼の姿を見てしまった。

 湯から上に、はみだしている部分だ。

 はっ!

 慌てて視線をそらす。

 そうして、慌てて身体を洗う続きに入った。

 カイトが。

 わざと、視線をそらしてくれているのが分かった。

 彼女の恥ずかしい気持ちを、分かってくれたのだろうか。

 急いで身体を洗ったり、髪を洗ったりして交代しないといけない。

 カイトだって身体を洗いたいに違いないのに、彼女がここを陣取っていたから、しょうがなくそっちに行ってしまったのだろうから。

 お風呂、というのは―― つくづく一人で入るのに適している場所だということが分かる。

 何もかもが、二人用というには小さいのだ。

 洗い場も、湯船も。

 二人でバスタブを使うには、くっついていなければならない。

 や、やだ。

 自分の考えてしまったことに焦って、彼女は大慌てで身体を流した。

 その途中で、ちらちらとバスタブの方を見る。

 しかし、やはり彼は顔をそらしたままだった。

 髪を。

 この期に及んでも、彼女はやはり右手を濡らしたくなかった。

 そこにカイトがいる。

 その事実に混乱や緊張や、いろんなものがロープのように絡まっているというのに、右手を極力使わないようにして頭を洗ったのだ。

 いつもなら、リンスをしてからしばらくおくのだが、今日はそんなヒマもなく、ざばっと流す。

 しとしとと滴る髪の水滴を払うと、彼女はもう一度、ゴムで髪をまとめ上げた。

 最後に身体をシャワーで流して、顔を洗って、それから、洗い場を流して。

 忙しく、カイトと交代するための作業を続けながら、メイは彼の方を見た。

 身動きもせずに、彼はそこに沈んだままだった。
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