冬うらら 1.5

 やっぱり、メイは熱い風呂が好きなのだろう。

 水を入れる様子もなく、そのまま静かにつかっている。

 その静かさが耐えられずに、カイトはシャワーの水を出しっぱなしで、身体だの頭だのを乱暴に洗った。

 泡を、身体になすりつけた端から流していくような、かなりインスタントな作業である。

 そんな風に、バチャバチャやっていると―― ものの数分で、作業が完了してしまった。

 顔も身体も頭も、あっという間に洗い終わってしまったのだ。

 はっ。

 ちらっと、メイの方を見る。

 今度は、身体のほとんどが湯の中につかっているのだから、見た瞬間にめまいを覚えるようなことはないだろう。

 バスタブは。

 二人、入れないことはない。

 うまくすれば、見ないままでも、身体を寄せ合うことが可能かもしれないのだ。

 カイトは、飛び出そうな心臓を抱えたまま、決意を持ってバスタブに向かった。

 その気配を察したのだろうか。

 メイは、マイナス同士の磁石のように、代わりにそこを出ていこうと身体を動かしたのだ。

 逃げんな!

 反射的に彼は、腕を掴んでいた。

 オレから……逃げんな。

 それが、一番耐えられないこと。

 一緒に風呂に、どうしても入らなければならなかったワケではない。

 しかし、こうやって逃げられるのだけは耐えられなかった。

 その理由が、遠慮だとか恥ずかしい、とかいう言葉であったとしても、それでもカイトはイヤだったのである。

 だから。

 勢いで。

 彼女の背中を抱え込むように―― ドボン!
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