冬うらら 1.5
□
「きゃあ!」
その勢いでか、彼女が悲鳴をあげた。
きっと、ただの驚きだ。
そうに決まっている。
いや、そうでなければならなかった。
恐怖なんかじゃない。
ただ、驚いたに違いないのだ。
湯船の中で、後ろからぎゅっと彼女を抱きしめたまま、その身体から驚きが逃げ去るまでじっとしていた。
「な…!」
なかなか強ばりの取れない彼女の身体にイラついて、反射的に大きな声になりそうになって、慌ててその口を一度閉じた。
これ以上怯えさせてどうしようというのか。
すぅっと一度息を吐いて。
「な…何も、しねぇ」
横を向いたまま、カイトはそう言った。
その証拠と言わんばかりに、そっと抱きしめていた腕を放す。
たかが、一緒にお風呂に入るというだけで、このザマだった。
何をしても、彼女とは初めてのことばかりで、不慣れなことづくしだ。
カイトは今まで、こういうスキンシップのある恋をしたことがなかった。
こんな、大事な恋は初めてだったのだ。
結婚したと言っても実感は薄く、まだ恋が他の穏やかな感情を置き去りに、一人だけぶっちぎって走り回っているのである。
ほかの感情は、一生懸命ついていこうとはするものの、遠く遙か後方だった。
だから、こんな風になってしまうのである。
穏やかに慈しんで温めあう恋―― なんて、木星よりももっと遠くだ。
「きゃあ!」
その勢いでか、彼女が悲鳴をあげた。
きっと、ただの驚きだ。
そうに決まっている。
いや、そうでなければならなかった。
恐怖なんかじゃない。
ただ、驚いたに違いないのだ。
湯船の中で、後ろからぎゅっと彼女を抱きしめたまま、その身体から驚きが逃げ去るまでじっとしていた。
「な…!」
なかなか強ばりの取れない彼女の身体にイラついて、反射的に大きな声になりそうになって、慌ててその口を一度閉じた。
これ以上怯えさせてどうしようというのか。
すぅっと一度息を吐いて。
「な…何も、しねぇ」
横を向いたまま、カイトはそう言った。
その証拠と言わんばかりに、そっと抱きしめていた腕を放す。
たかが、一緒にお風呂に入るというだけで、このザマだった。
何をしても、彼女とは初めてのことばかりで、不慣れなことづくしだ。
カイトは今まで、こういうスキンシップのある恋をしたことがなかった。
こんな、大事な恋は初めてだったのだ。
結婚したと言っても実感は薄く、まだ恋が他の穏やかな感情を置き去りに、一人だけぶっちぎって走り回っているのである。
ほかの感情は、一生懸命ついていこうとはするものの、遠く遙か後方だった。
だから、こんな風になってしまうのである。
穏やかに慈しんで温めあう恋―― なんて、木星よりももっと遠くだ。