冬うらら 1.5
□
「あの…その……」
なのに彼女は、離そうとしたカイトの手を追いかけた。
そっと片方の手を、両手で優しく捕まえると、自分の身体に回すように動かす。
ズキンッ。
彼の心臓のことを、本当にメイは知っているのか。
こんなに、まるで自分からカイトを求めるような行動に出られると、覚えたことのないような痛みに襲われるのだ。
愛しくて、しょうがない。
「メイ…」
ぎゅっと、もっと抱き寄せる。
その濡れた髪の匂いに、頬を押しつけるように。
「きゃっ!」
しかし。
いきなり、彼女が驚いた声をあげた。
腕の中の存在に、トランスが入りかけたカイトは、それで無理矢理現実に引き戻された。
自分が、何かイヤなことでもしたのかと思ったのだ。
そうではなかった。
彼女は、湯の中に沈んでいた、手をばしゃんと空中に取り出したのだ。
そして。
「よかったぁ…」
本当に嬉しそうな声で、小さくつぶやく。
彼女の視線の先は、右手だった。
たとえ、後ろから抱きしめて目の動きが分からなくても、それだけははっきり分かった。
右の手のひらには。
へたくそな数字が、並んでいたのだった。
それが一体何で、なおかつ誰が書いたかなんて―― 考えるまでもなかった。
「あの…その……」
なのに彼女は、離そうとしたカイトの手を追いかけた。
そっと片方の手を、両手で優しく捕まえると、自分の身体に回すように動かす。
ズキンッ。
彼の心臓のことを、本当にメイは知っているのか。
こんなに、まるで自分からカイトを求めるような行動に出られると、覚えたことのないような痛みに襲われるのだ。
愛しくて、しょうがない。
「メイ…」
ぎゅっと、もっと抱き寄せる。
その濡れた髪の匂いに、頬を押しつけるように。
「きゃっ!」
しかし。
いきなり、彼女が驚いた声をあげた。
腕の中の存在に、トランスが入りかけたカイトは、それで無理矢理現実に引き戻された。
自分が、何かイヤなことでもしたのかと思ったのだ。
そうではなかった。
彼女は、湯の中に沈んでいた、手をばしゃんと空中に取り出したのだ。
そして。
「よかったぁ…」
本当に嬉しそうな声で、小さくつぶやく。
彼女の視線の先は、右手だった。
たとえ、後ろから抱きしめて目の動きが分からなくても、それだけははっきり分かった。
右の手のひらには。
へたくそな数字が、並んでいたのだった。
それが一体何で、なおかつ誰が書いたかなんて―― 考えるまでもなかった。