冬うらら 1.5
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本当は、違ったのだ。
この身体のどこかに、カイトの名前が刻まれているようで嬉しかったのに。
もう一度眺めると、また、ため息が出てしまった。
顎が。
メイは、びっくりした。
カイトの顎が、自分の顔の横からにょきっと出てきたのである。
彼女の肩越しに、顔をのぞき込もうとするかのように。
首を竦めるようにしてそっちを見ると、ほんの間近に彼の目がある。
あのグレイの目が、じっと自分をのぞき込むのだ。
どうかしたのか?
そんな目だった。
気落ちに気づかれたのだろう。
怪訝そうで、少し心配な目の色だ。
たかが手のひらの文字を消しただけで、彼女がこんなにも落ち込むとは思っていなかっただろうし、それが普通だった。
言い逃れを、させてくれないような目だ。
彼女が、さっき手のひらに隠していたヒミツの匂いを、かぎとられてしまったのである。
「あの…ね」
メイは、視線をそらしながらぽそっと呟いた。
「ホントは…えっと……嬉しかった…の」
白状する。
でないと、ずっとカイトに見つめられ続けるのではないのかと思ったのだ。
「カイトの字が書いてあるのが…嬉しかったの。何か…私にしるしが残ってるみたいで…」
そこまでしか言えなかった。
やっぱり、だんだん恥ずかしくなってきたのだ。
本当は、違ったのだ。
この身体のどこかに、カイトの名前が刻まれているようで嬉しかったのに。
もう一度眺めると、また、ため息が出てしまった。
顎が。
メイは、びっくりした。
カイトの顎が、自分の顔の横からにょきっと出てきたのである。
彼女の肩越しに、顔をのぞき込もうとするかのように。
首を竦めるようにしてそっちを見ると、ほんの間近に彼の目がある。
あのグレイの目が、じっと自分をのぞき込むのだ。
どうかしたのか?
そんな目だった。
気落ちに気づかれたのだろう。
怪訝そうで、少し心配な目の色だ。
たかが手のひらの文字を消しただけで、彼女がこんなにも落ち込むとは思っていなかっただろうし、それが普通だった。
言い逃れを、させてくれないような目だ。
彼女が、さっき手のひらに隠していたヒミツの匂いを、かぎとられてしまったのである。
「あの…ね」
メイは、視線をそらしながらぽそっと呟いた。
「ホントは…えっと……嬉しかった…の」
白状する。
でないと、ずっとカイトに見つめられ続けるのではないのかと思ったのだ。
「カイトの字が書いてあるのが…嬉しかったの。何か…私にしるしが残ってるみたいで…」
そこまでしか言えなかった。
やっぱり、だんだん恥ずかしくなってきたのだ。