冬うらら 1.5
□
何だと?
これには驚いた。
彼にしてみれば、いいことをした気持ちになっていたというのに、ひどく残念そうな反応だったのである。
そんなはずがないと、カイトは彼女の顔を見ようと首を突き出した。
この角度だと、メイの肩を乗り越えるしか方法はないからだ。
気配に気づいたのか、向こうも彼の方を向く。
非常に窮屈で、間近な角度で目が合った。
驚いてはいたけれども、メイの表情には、さっき彼が予想したような落胆の影があったのだ。
何でだ。
いまの自分の行為が、どうして彼女を落胆させたのか、ちっとも分からなかった。
だから、じっと覗き込んで心を探そうとした。
ちゃんと理解したかったのだ。
「あの…ね」
視線が逃げる。
そうして、恥ずかしそうに洗い立ての唇を開いた。
「ホントは…えっと……嬉しかった…の」
はぁ??????
続いた言葉を聞いたが、カイトにはちっとも分からなかった。
一体何が嬉しかったというのか。
手の汚れを落としたことが嬉しかったのだろうか。
しかし、さっきの落胆の反応とは、食い違うような気がする。
先走る予測を押さえつけて、次の言葉を待った。
「カイトの字が書いてあるのが…嬉しかったの。何か…私にしるしが残ってるみたいで…」
すると。
なんと。
そんなことを、言い出すではないか。
カイトは絶句した。
あの落書きを、彼女は嬉しかったというのである。
とにかく、ケイタイ番号を教えずにはいられなかったカイトが、とっさに彼女の手を捕まえて書いた落書きが、嬉しくて。
まるで。
そう、まるで―― 今まで大事にしていたかのように。
何だと?
これには驚いた。
彼にしてみれば、いいことをした気持ちになっていたというのに、ひどく残念そうな反応だったのである。
そんなはずがないと、カイトは彼女の顔を見ようと首を突き出した。
この角度だと、メイの肩を乗り越えるしか方法はないからだ。
気配に気づいたのか、向こうも彼の方を向く。
非常に窮屈で、間近な角度で目が合った。
驚いてはいたけれども、メイの表情には、さっき彼が予想したような落胆の影があったのだ。
何でだ。
いまの自分の行為が、どうして彼女を落胆させたのか、ちっとも分からなかった。
だから、じっと覗き込んで心を探そうとした。
ちゃんと理解したかったのだ。
「あの…ね」
視線が逃げる。
そうして、恥ずかしそうに洗い立ての唇を開いた。
「ホントは…えっと……嬉しかった…の」
はぁ??????
続いた言葉を聞いたが、カイトにはちっとも分からなかった。
一体何が嬉しかったというのか。
手の汚れを落としたことが嬉しかったのだろうか。
しかし、さっきの落胆の反応とは、食い違うような気がする。
先走る予測を押さえつけて、次の言葉を待った。
「カイトの字が書いてあるのが…嬉しかったの。何か…私にしるしが残ってるみたいで…」
すると。
なんと。
そんなことを、言い出すではないか。
カイトは絶句した。
あの落書きを、彼女は嬉しかったというのである。
とにかく、ケイタイ番号を教えずにはいられなかったカイトが、とっさに彼女の手を捕まえて書いた落書きが、嬉しくて。
まるで。
そう、まるで―― 今まで大事にしていたかのように。