冬うらら 1.5
□
『私にしるしが残ってるみたいで』
シルシ。
カイトが、彼女に刻んだ文字。
そんなものを後生大事にしていたのだ。
だから、消されたくなかったのである。
早く言え!
カイトはそう怒鳴りそうになった。
だが、もし素直に言われた時に、自分がそれを消さずにいられたかどうかという話になると。
多分答えは、どっちにしろ消した、というところだろう。
確かに彼女が、たかがカイトの文字を、ここまで大事にしてくれていたことは嬉しい。
しかし、こんな文字よりも、いまここにカイト本人がいるではないか。
それが理不尽だった。
本人がいるなら、そんなシルシよりも本人をもっと見ればいいのである。
彼は、もう一度彼女の腕を捕まえて引っ張った。
「んな…字より……」
ぐっとひっぱった腕に唇を寄せる。
もっと別のしるしだって、カイトはつけることが出来るのだ。
そんなに欲しいなら、いくらだって残してやることが出来る。
腕を。
「えっ…」
メイが、ビクッと手を震わせたが逃がさなかった。
腕を―― 強く、吸った。
『私にしるしが残ってるみたいで』
シルシ。
カイトが、彼女に刻んだ文字。
そんなものを後生大事にしていたのだ。
だから、消されたくなかったのである。
早く言え!
カイトはそう怒鳴りそうになった。
だが、もし素直に言われた時に、自分がそれを消さずにいられたかどうかという話になると。
多分答えは、どっちにしろ消した、というところだろう。
確かに彼女が、たかがカイトの文字を、ここまで大事にしてくれていたことは嬉しい。
しかし、こんな文字よりも、いまここにカイト本人がいるではないか。
それが理不尽だった。
本人がいるなら、そんなシルシよりも本人をもっと見ればいいのである。
彼は、もう一度彼女の腕を捕まえて引っ張った。
「んな…字より……」
ぐっとひっぱった腕に唇を寄せる。
もっと別のしるしだって、カイトはつけることが出来るのだ。
そんなに欲しいなら、いくらだって残してやることが出来る。
腕を。
「えっ…」
メイが、ビクッと手を震わせたが逃がさなかった。
腕を―― 強く、吸った。