冬うらら 1.5

 そのままぎゅうっと。

 彼女を強く抱きしめた。

 赤くなった首筋に唇を埋めて、強く吸う。

 メイの身体に、自分というしるしを残してしまいたかった。

「メイ……」

 最後まで、彼女の名前を囁こうとした。

 しかし、途中ではっと我に返ったのだ。

 まだ、ここはバスルームなのである。

 そして、彼は何もしないと彼女に言ったのだ。

 他の人間との約束なら、いくらだって破るだろう。

 しかし、彼女の信用を失う真似だけはしたくなかった。

 けれども、このままここにいては―― きっと、もうちょっとで弾け飛ぶに違いないのだ。

 クソッ!

 胸をかきむしりたい衝動をこらえて、カイトはざばんとバスタブから身体を引き起こした。

 彼女一人を残して。

 カイトは、風呂場を逃げ出した。

 バタンと強くすりガラスのドアを開けると、水滴をしたたらせたまま脱衣所に入ったのだ。

 彼女からどんなに逃げようとしても、身体の中のマグマは燃えさかるばかりで、一向に静まる様子がなかった。

 身体を拭いても。

 着替えても。

 脱衣所のドアを開けても。

 メイを―― 抱きしめたくてしょうがなかった。


 もう、我慢するのはやめたはずなのに。
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