冬うらら 1.5
●
こんなことをやっている場合ではなかった。
カイトが、先にお風呂をあがってしまったのである。
何か大きな問題が起きたとは思いにくいので大丈夫だろうが、やはり心配ではあったのだ。
メイも、湯船から出た。
くらっとめまいがする。
立ちくらみだ。
思えば、あんな熱い風呂に長い間つかっていたのである、たちくらみがしても当然だった。
あら?
洗い場のところでクラクラっときて、メイは壁に手をついてこらえた。
真っ暗な目の前が、赤や黄色に点滅する。
そのままこらえようとしたのだが。
ガタガシャーン!
支えきれなくなって膝を崩す。
巻き込んだのは、シャンプー類の小さな棚。
痛みは全然なかった。というか、それどころではなかった。
座り込んで、血が全身に回りきるまで、おとなしくしているしかなかったのだ。
「メイ!」
しかし。
その音は、外まで伝わったのだろうか。
ためらいのない音が、バタンとすりガラスのドアを開けて名前を呼ぶ。
カイトだ。
その頃には、ようやくめまいも取れてきたので、彼女は顔を上げた。
パジャマ姿のカイトが、そこにいた。
「あ、ごめんなさ…ちょっとたちくら……」
メイは、大丈夫なことをアピールしようと笑顔を作る。
けれども、最後まで言うまでもなく、一度カイトがばっと身体を翻す。
しかし、一瞬だけだった。
次に戻ってきたカイトは、手にバスタオルを持っていて。
それで、彼女をくるんでくれたかと思うと。
「きゃあっ!」
驚いた。
いきなり、視界が一回転したのだ。また、めまいでもしたのかと思った。
しかし、目眩ではなかった。
彼女は―― カイトに抱きかかえられていたのだ。
こんなことをやっている場合ではなかった。
カイトが、先にお風呂をあがってしまったのである。
何か大きな問題が起きたとは思いにくいので大丈夫だろうが、やはり心配ではあったのだ。
メイも、湯船から出た。
くらっとめまいがする。
立ちくらみだ。
思えば、あんな熱い風呂に長い間つかっていたのである、たちくらみがしても当然だった。
あら?
洗い場のところでクラクラっときて、メイは壁に手をついてこらえた。
真っ暗な目の前が、赤や黄色に点滅する。
そのままこらえようとしたのだが。
ガタガシャーン!
支えきれなくなって膝を崩す。
巻き込んだのは、シャンプー類の小さな棚。
痛みは全然なかった。というか、それどころではなかった。
座り込んで、血が全身に回りきるまで、おとなしくしているしかなかったのだ。
「メイ!」
しかし。
その音は、外まで伝わったのだろうか。
ためらいのない音が、バタンとすりガラスのドアを開けて名前を呼ぶ。
カイトだ。
その頃には、ようやくめまいも取れてきたので、彼女は顔を上げた。
パジャマ姿のカイトが、そこにいた。
「あ、ごめんなさ…ちょっとたちくら……」
メイは、大丈夫なことをアピールしようと笑顔を作る。
けれども、最後まで言うまでもなく、一度カイトがばっと身体を翻す。
しかし、一瞬だけだった。
次に戻ってきたカイトは、手にバスタオルを持っていて。
それで、彼女をくるんでくれたかと思うと。
「きゃあっ!」
驚いた。
いきなり、視界が一回転したのだ。また、めまいでもしたのかと思った。
しかし、目眩ではなかった。
彼女は―― カイトに抱きかかえられていたのだ。