冬うらら 1.5

 バスタオルのまま、布団の中に押し込まれる。

「んな、熱ぃ風呂に長く入ってっからだ……」

 ベッドのへりに腰掛けたままのカイトに、そんなことを言われる。

 言われて当然である。

 しかし、心配でたまらない色をしていた。

 彼が言葉に込めた気持ちが、いっぱいに押し寄せてくる。

 しゅーん。

 迷惑をかけてしまったという事実が恥ずかしくて、メイはちっちゃくなってしまった。

「ごめんなさい…でも、カイト、熱いお風呂が好きみたいだったから」

 だから、お水足せなかったの。

 メイは、布団の内側に唇を隠すようにもそもそっと言った。

 その時のカイトの顔ときたら。

 目を見開いて、一体何を言っているのか、理解できないような表情を作ったのだ。

「あ、熱い風呂が好きなのは、おめーの方じゃ…?」

 驚きのまま、呆然とした唇がそんなことを言う。

 ええぇぇぇぇ?????

 今度驚くのは彼女の方だ。

 あんな熱いお風呂に、カイトは文句も言わずにつかっていたのだ。

 それが好きなのだと、メイは信じて疑っていなかった。

「だって……」

「けど」

 二人。

 同時にお互いの表情に驚きながら、そんなことを言った。

 そして。

 ようやく分かったのだ。

 二人とも、お互いが熱い風呂が好きなのだと誤解して、水を足すのを遠慮していたのである。

 我慢して、熱い風呂の中に沈んでいたのだ。
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