冬うらら 1.5
□19
 カイトは、脱衣所に続くドアから、離れることができなかった。

 あんな中途半端な状態で、彼女と自分を引き剥がしてきたのだ。

 身体の中で荒れ狂う溶岩を押さえきれずに、彼はイライラしながら、メイが出てくるのを待った。

 彼女が衣服を身につけて、このエリアに帰ってきたらもう大丈夫なのだ。

 抱きしめようとも、キスをしようとも。

 何もかも許されるハズであった。

 そんな時だった。

 何かが転がるような、派手な音が浴室から聞こえてきたのは。

 頭の中に疑問が浮かぶよりも早く、驚きのままカイトはドアを開けて脱衣所を横切り、バスルームに踏み込んだのだった。

「メイ!」

 何が起きたのか。

 その光景を見て、はっきりと分かった。

 彼女が洗い場のところで膝をついて座り込んでいたのだ。

 壁に手をつくようにして。

 めまいを起こしたのだ。

 カイトは。

 何か言いかけた彼女を置き去りに、ぱっと身を翻した。

 早くここから連れ出してやりたかったが、まだメイは裸のままなのだ。

 そこらにあるバスタオルをがしっと掴む。

 戻るなり、彼女の身体をそれで包み込むと。

 ぐいっと。

 驚きの悲鳴をあげるメイを―― そこから助け出したのだった。
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