冬うらら 1.5

 お風呂場から直行してきた湿った身体を、そのままベッドの中に押し込んだ。

 本人は、大丈夫そうなことを言っていたのだが、カイトはそんな言葉では納得しなかった。

 彼女は、大丈夫じゃない時まで大丈夫と言う性格であることが、だんだん分かってきていたからだ。

 初めて一緒にお風呂に入って、こんな騒ぎになってしまった。

 カイトも普通じゃなかったし、彼女もそうだ。

 たかが風呂、のハズだったというのに。

 こんなことでは先が思いやられてしまう。

「んな、熱ぃ風呂に長く入ってっからだ……」

 ベッドのへりに腰掛けて、彼女を見る。

 本当は心配なくせに、自分の口ときたらこんな風にしか言えないのだ。

 もっと、いたわるセリフが出てこないのか。

「ごめんなさい…でも、カイト、熱いお風呂が好きみたいだったから」

 布団の陰に唇を隠すようにしながら、メイは小さな声でそう言った。

 はぁ?

 それには驚いた。

 一体、どういう経緯で、彼が熱い風呂が好きだと思ったのか。

 そんなこと、いままで言ったこともなかったハズである。

「あ、熱い風呂が好きなのは、おめーの方じゃ…?」

 だから、呆然としながらそう言った。

 それが、カイトの水を足さなかった理由だ。

「だって……」

「けど」

 二人、言いかけた言葉をそのままに言葉を止める。

 正確には、絶句だった。

 そこで、やっと理由が分かったのである。
< 83 / 102 >

この作品をシェア

pagetop