冬うらら 1.5

01/12 Wed.

□20
 珍しく、朝がカイトに優しかった。

 大体、その存在は彼にとってずっと敵であり続けた。

 朝が苦手で、いつも苦しめられてきたのだ。

 しかし、最近は違う。

 朝というものは、目が覚めるということであり、そして、彼女に出会うことが出来るというスタート地点でもあったのだ。

 だから、メイのいる朝は、だんだん彼にとって違う意味を持つようになってきていた。

 そうして、ついに。

 何かに引かれるように、彼はすっと瞼を上げたのだ。

 メイが―― すぐそこにいた。

 うぅ。

 あどけなく眠るその顔を見てしまった瞬間、身体が彼女をぎゅっと抱きしめたがった。

 しかし、唸るようにしてこらえる。

 まだ、メイはぐっすり眠っているのである。

 いまの彼の衝動で抱きしめると、彼女を起こしてしまいかねなかった。

 だが、もう少し側に寄るくらいなら問題がないかもしれない。

 もっと近くに。

 カイトが、身体をよじるように近づけようとした時。

「ん……」

 もぞっと、メイが動いた。

 そのはずみで、布団からこぼれ出る素肌の肩。

 白い、というのがはっきり分かるくらいに明るかった。

 窓にはカーテンがしてあるので、正確な時間は分からないが。

 カイトは、布団をかけなおしてやろうと片腕を出した。

「んー…」

 すると、まるで彼女は子犬のような仕草で温かさを求めるように、カイトにすりついてきたのだ。

 普通よりもちょっと高い睡眠中の体温が、カイトに触れる。柔らかい素肌の感触。

 昨夜も一度見せた、その安心しきった愛しい行動に、本当に彼女を起こすほど強く抱きしめそうだった。

 そっと腕を回す。

 ここでこらえる。

 けれども、その行動にメイは反応さえしない。

 まだ、深く眠っているようだ。

 こんな寝顔が見られるのは、本当に嬉しかった。

 いつもメイの方が、起床は早いため、それを全然知らないのだ。

 ということは、彼女に寝顔を見られているのだろう。

 どんなマヌケ面で寝ているのかと考えると、余り面白いことではなかった。
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