冬うらら 1.5

 メイも、もう少し寝坊をしていいのだ。

 そして、カイトにこんな気持ちを、味わわせて欲しいのである。

 そんな時。

 階下で。

 車の音がした。

 ん?

 カイトが眉を顰めた瞬間。

 ぱちっ。

 腕の中のメイが目を覚ました。

「え…?」

 一瞬、何もかも分からなくなったかのような茶色の目が、カイトを映す。

 起き抜けによくある現象だ。

 その瞳が、ぱっと違う方を向いた。

 枕元だ。

 カイトも、つられてそっちの方に頭を動かそうとした。

 が。


「きゃー!!!!!!!!!!!!」


 腕の中のメイが、大きな悲鳴を上げたのだ。

 カイトはびくっとして、枕元を見た。

 時計だった。

 8時10分。

 シュウが―― 出かける時間だ。

 ということは、さっきの車の音は、階下の男である。

 そして、彼らはまだベッドの中にいた。

 そう。

 見事な寝坊だったのだ。

「ど、どうしよう…ええ、えっと、朝ご飯!」

 メイは起き上がるなり、ベッドから飛び出そうとした。


「きゃー!!!!!!!!!!!!」


 しかし、また悲鳴になって戻るだけだった。

 彼女は、まだ何も着ていない状態だったのだ。
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