愛かわらずな毎日が。

私を後ろからすっぽり包み込んだ福元さんの言葉は、私の頭の中を真っ白に染める。


今日一日、締めつけられるような痛みに耐え、ドクドクと激しく脈打つことにも耐えてきた心臓にとどめを刺すような。

息することも忘れてしまいそうな、そんな言葉だった。


「俺と、付き合って」


私を抱きしめる腕にぎゅっと力が込められると、その反動で私の体にもグッと力が入る。

ガチガチに固まってしまった全身に刺激を与えるかのように、心臓はドクドクと激しく脈打ち、握りしめていた手はビリビリと痺れたように震え出した。

目の奥がジワジワと熱い。


だって、信じられないんだもの。

福元さんの口から、そんな言葉を聞かされるなんて。


思ってもみなかったから。


「…………ごめん」

福元さんの腕がゆっくりと解かれ、私と福元さんの間で空気が揺れるのを感じた。

「…………ぁ、」


「いきなりで、ごめんね」


「………い、え」


「先に訊くべきことがあったのに。そんなことを考える余裕もなかった、……というか。
抑えられなかった」


「…………」


緊張とか、驚きとか。

いろいろなものが私の中で渦巻いて。


「うれしい」って感情が、私の中でどんどんと膨らみ、拡がっていく。


福元さんに背を向けたまま、涙がこぼれ落ちそうになるのを必死に堪えていた。

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