愛かわらずな毎日が。

「悪い。遅くなって」

何度か訪れたことのあるバーで二杯目のビールを飲み干す頃、ようやく姿を現したそいつが、

「あ。部長!お疲れ様です」

なんて俺の言葉を聞いて、はぁっ、とわざとらしく息を吐き出した。


「部長!部長は何にします?食事はもうお済みですか?」


「………なんだろう。おまえの顔見たら、どっと疲れが」


「そんなこと言わないでくださいよ、部長ぉ」


懲りずに『部長』を連呼する俺の右隣りに腰掛けたのは、俺と同期の福元壮真。


つい最近、部長に昇進した。


「べつに、ひがんでるわけじゃないよ?」

「わかってるけど、」

肩を竦めた俺をチラリと見た福元は、ワイシャツの袖を捲り直しながらビールを注文した。


「テンション高いな。何杯目?」

「ん?二杯目」

「うそつけ」

「あはははは」


正直に言うと、ここに来る前、企画部の女の子たちと飲んでおりました。

「ずっと、佐伯さんと飲みに行きたいと思ってたんですよ〜。これから一緒にいかがですか?」

なんて誘いに乗ってしまいまして。

なので、これが何杯目になるのか定かではありません。

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