愛かわらずな毎日が。
「こんな時間から酔っ払いの相手をさせられるとはね」
福元はそう言うと、フンッと鼻を鳴らした。
「なんだよー、その言い方は。おまえの都合に合わせたからこの時間になったんだろ」
頬杖をついて福元を睨みつけると、福元は誤魔化すように目を細めて笑った。
「……ったく。せっかく本社に戻ってきたっていうのに。毎日毎日残業じゃ、飲み会なんていつになることやら」
グラスに口をつけた福元に向かってそう言うと、福元はビールの泡を気にしてか、親指で唇を拭いながら小首を傾げた。
「飲み会?」
「そう。おまえの昇進祝いの」
「べつにいいよ、そんなの」
「いやいや、大事だろ。重要だろ。だって、部長だぜ?」
「大げさだな」
「大げさなんかじゃないさ」
福元は大したことない、って顔をしてるけど。
うちの会社は年功序列を重んじる、少しばかり考え方の古い会社だ。
いくら営業成績が良いからといって、30前半の若造が部長になることは、奇跡と言っていいほど稀なこと。
『6月1日付で本社勤務とする。
第三営業部部長 福元 壮真』
そんな用紙が貼り出された日、正直、俺の中にちょっとした焦りとか、敗北感、それから嫉妬なんていうものも生まれたりしたけど。
それでも。
同じ営業部の人間として。
同期として。
親友として。
福元の頑張りを誰よりも近くで見てきた俺にとって、今回の昇進は自分のことのように喜ばしいことなんだ。