愛かわらずな毎日が。
「………ごめ、」
「プーーーーッ」
ごめん、と謝ろうとした私。
そんな私を見て吹き出した香織。
「なに?なんで笑うの」
「あはははは。ごめん、ごめん。愛のせいじゃなくて。……ふふっ。ちがうの」
「……え?……なに、が?」
私も、森下も、訳がわからずに首を傾げた。
「ごめんね。愛が悪いんじゃなくてね。
私に勇気がなかっただけなのよ」
「え……?」
「プロポーズされたことは、すぐに報告したかったんだけど。私の場合、……ほら、妊娠とセットになってたからさ。
なんていうか……。妊娠って、何があるかわからないじゃない?
……だから、なかなか言い出せなかったの」
香織はそう言い終えると小さく笑った。
「………そっか」
ゆらゆらと揺れるような香織の笑顔を見たら、胸の奥がきゅっと締めつけられたように苦しくなった。
「………ごめん」
「ふふっ。私のほうこそ、ごめん」
「ううん。香織の気持ちも考えずに、………なんていうか、」
私が言葉を詰まらせたのを見計らったように、会議室の隅にある電話が鳴った。
「でまーす」
森下がお茶をひと口飲んでから席を立つ。
「おねがーい」
香織はそう言うと、卵焼きを口に運んだ。