愛かわらずな毎日が。
「………あ、あのさ。………つわりとか、そういうの、大丈夫なの?」
一緒に食事をしていても、気分悪そうにしていたり、食欲が落ちた様子も見受けられなかった。
だからだろうか。
香織の小さな変化に気づいてあげられなかった。
「ドラマみたいにね、突然『うっ』て吐き気に襲われることもなくて。
個人差があるって言うけど、私の場合はお腹が空くと胃が少しムカムカするくらい」
「………へぇ。そうなんだ」
「うん。ほんと、助かっちゃう」
そっとお腹に手を置いた香織が、目を細めてそう言った。
「…………」
「なによ。どうかした?」
「………なんか、さ」
「うん?」
「なんていうか、」
「なによ」
「……なんだか、胸がいっぱいで」
「………え?」
自分の中に新しい命が存在する感覚を、私はまだ知らない。
想像もつかない。
それなのに。
柔らかな表情をしてお腹を撫でる香織を見ていたら、体の奥底から湧いてくる、なんとも言いようのない感情で胸がいっぱいになったのだ。
「……おめでと」
「ふふっ。………うん。ありがとう」