愛かわらずな毎日が。

ガラス越しに営業部の部屋を覗く。

第一、第二、第三営業部とグループ分けはされているけれど、部屋はひとまとめだ。

ズラリと並んだ机のせいで普段は狭く感じるこの部屋も、みんな出払っているためか無駄に広く感じてしまう。


「やっぱり居ない、……よね」


ドアを開け、部屋に足を踏み入れる。

静まり返った部屋に響いたのは、ドアの閉まる音と私のため息。


きちんと整理整頓された福元さんの机を見つめていたら、自然とこぼれ落ちた言葉。


「遠距離恋愛のほうが、まだ……」


だって。

遠距離恋愛なら、会いたくてもすぐには会えないと諦めがつく。

だけど、そうじゃない。


私たちは同じ会社で働いている。

こうしてちょっと足を運べば会える距離にいる。

それなのに。


「…………井沢のせいだ」

置きっぱなしのマグカップや、開いたままの営業用の資料、小さなフィギュアがいくつも飾られている井沢の机を睨みつけた。


先週末、井沢が顧客とトラブった。

ミス自体は大したものではなかったけれど、先方曰く、「その後の対応が気に入らない」とのこと。

担当を変えろだの、契約解除だの、随分とご立腹のようで、直属の上司である福元さんが井沢の尻拭いをしているのだ。


ただでさえ忙しい福元さんの仕事を増やすだなんて。


「……井沢のばーか」


井沢に八つ当たりするのはどうかと思う。

わかってる。

わかってるけど。

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