愛かわらずな毎日が。

「電話、できなくてごめん」

ちょっぴり低い声でそう言った福元さん。


「……………え?」


「電話するって言ったのに、できなかったから」


「……………あ、」


福元さんが申し訳なさそうな顔で私を見るから、なんだか胸が苦しくなって、視線を手元のノートに移した。


こんなとき、どうすればいいのだろう。


ずっと待ってたのに、と拗ねるべきか。

べつに気にしてませんよ、と流すべきか。


ドクドクと脈打つ心臓が、答えを急かしているようだった。


焦りからくるものだろうか。

額に薄っすらと汗を滲ませた私は、福元さんに触れることができなかった右手に力を入れ笑顔を見せた。


それしかできなかった。


「それじゃあ、」

福元さんは小さく笑うと、いってきます、と言って私に背を向けた。


「いっ…、いってらっしゃい…っ」

福元さんの背中に向かってそう言ったあと、福元さんが部屋を出るまでその後ろ姿を見つめていた。


「はぁぁぁ……」


福元さんがいなくなってしまい、余計に広く静かに感じる部屋に響くのは、私のため息と、無駄にめくられるノートの薄っぺらい紙の音だけ。



ああすればよかった。

こうすればよかった。


そんなふうに考えられるようになるのは、随分と時間が経ってからのことで。

それでも。


「どうすればよかったのかな………」

正解を導き出せずにいる私の頭の中は、「後悔」の文字で溢れかえっていた。

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