愛かわらずな毎日が。
《総務部より
備品を持ち出した方はきちんとノートに記入してください》
出入口横の壁に掛けられたホワイトボードに幾度となく書き込んできた言葉。
どうせ次回も同じことを書くのだろうと思いながらも、空いているスペースにいつもより大きめの字で書いていく。
「……さてと。次は企画部に、」
クリップボードを抱えて部屋を出ようとした私の背後で電話が鳴った。
内線であることを知らせるその音は、福元さんの机の辺りから聞こえてくる。
私はすぐ近くの電話に駆け寄り「内線」を押して受話器を取った。
「はい。営業部です」
『あ。受付の三村です。福元部長はいらっしゃいますか?』
声の持ち主は、ふたつ年下の女の子だった。
「福元部長なら、たった今出掛けたけど」
『そうですか…。つい先ほど姿を見かけたので、まだそちらにいらっしゃるのかと』
「外線?私でよければ代わるけど」
『ほんとですか?助かります。鈴木様とおっしゃいます。すみませんがお願いします』
そのすぐあとで外線に切り替わる音がして、私は胸ポケットのボールペンに手をかけた。
「私でよければ代わるけど」なんて。偉そうに言ったけど。
言わなければよかった。
電話になんか出なければよかった。