愛かわらずな毎日が。
「ときどきは、『呼吸してます』って。口にするべきなのかな」
何度も唇を重ねたその後で、福元さんが私の髪を撫でながら静かに言った。
「え……?」
「愛を不安にさせてるなら、そうならないように想いを口にするべきなのかな、って」
真っ直ぐに向けられた福元さんの目は、まばたきするのも惜しいと思うほど魅力的なものだった。
だからまた、私の胸はきゅんと音を立てる。
「できれば。……ちゃんと、口にしてくれると、……助かる、……かも」
「そっか。うん、わかった。そうする」
「………お願い、します」
胸を熱くさせた私の瞼にそっとあてられた唇。
閉じた目の奥が熱かった。
ジンジンと痺れるように熱かった。
『呼吸って。息するのってさ、四六時中、無意識のうちに繰り返してるだろう?仕事してるときも。寝てるときも』
『一緒なんだ。いつだって想ってる、ってことだよ』
『俺はいつだって、愛のことを想ってる』
福元さんの言葉を思い出して、胸が熱くなる。
きっと。
呼吸を止めるのと同じで。
福元さんへの想いを止めてしまったら、酸素を欲しがるように求めてしまうのだろう。
笑顔、優しさ、手のぬくもり、唇の感触。
福元さんの、ぜんぶを。
福元さんが想いを口にしてくれたときは、その想いを深く吸い込んで、私の中にある福元さんへの想いを吐き出そう。
これからも、ずっと。
福元さんの隣で呼吸する日々が。
福元さんの腕の中で呼吸する日々が。
ふたりで深呼吸する日々が。
ずっと。
ずっと、続きますように。
【END】