愛かわらずな毎日が。
駅のホームで電車を待つ私の携帯が着信を知らせる。
『今から会えない?』
電話の相手はケンカ中の彼氏、ではなく。
同期の香織ちゃんからだった。
「えぇっ!!福元さんが!?お見合いっ!?」
駅から徒歩5分のところにある居酒屋で、ジョッキ片手にあんぐりと口を開けて香織ちゃんを見ると、香織ちゃんは、
「ううん。しないと思う。多分、愛の勘違い」
と、手を横に振って否定した。
「え?どうゆーこと?」
「あー…、うん。あのね、」
豆腐サラダとなんこつの唐揚げを交互につまんでいた香織ちゃんは、ふぅっと小さく息を吐くと、「福元さんのお見合い疑惑」について話しはじめた。
「福元さんあてに電話があってね、」
「うんうん」
「その電話がね、………………、って」
「それでそれで?」
「…………………、というわけなの」
「なるほどねぇ」
空になったジョッキをテーブルの隅に置き、ちょうど通りかかった店員さんにおかわりを頼んだ私は、ふんわり焼かれたつくねに箸を付けた。
「確かめもしないでウジウジしちゃって。だから思わず、バカみたい、って言っちゃったの。
福元さんに確認してからじゃないと、相談には乗らないから、って。置いて帰ってきちゃった」
香織ちゃんは頬杖をつき、サラダに添えられていたくし形のトマトを箸でつつきながら話し続ける。
「彼女なんだから遠慮することない、とか。
福元さんが話してくれるまで待つのはやめて、とか。福元さんのこと信じてあげなよ、とか。
言いたいこと言って、帰ってきちゃったの」
香織ちゃんがめずらしく、しゅんとした表情を見せた。