愛かわらずな毎日が。
「井沢が、忘年会どうしようか、って。塚田ちゃんにも予定を訊いておいて、って言われた」
「まだ10月じゃない。相変わらずそういうことに関しては行動が早いよね。店は井沢に決めさせよう」
「あはは」
テーブルに並んだ料理をつまみながら二杯目のビールを飲み干す頃、ウーロンハイをちびちびと飲んでいた香織ちゃんが左腕の時計で時間を確認しながら言った。
「福元さんと、会えたかな」
香織ちゃんのその言葉で、立て掛けてあったメニューを手に取った私の口元が緩んだ。
「メールしてみたら?」
「んー…」
「すればいいのに」
「じゃあ、あとで送ってみる」
「あはは。うんうん。そうしなよ」
「うん」
香織ちゃんはグラスについた水滴を指で拭いながら小さく笑った。
「ねぇねぇ」
「うん?」
「香織ちゃんはさ、愛ちゃんを見てて、……なんかこう、胸がムズムズっていうか、ほわほわ、みたいな。そういう感じになること、ある?」
箸の先を唇にちょんとつけて私の話を聞いていた香織ちゃんが、ウンウンと頷いた。
「ムズムズっていうか。きゅんとくる、っていうか。懐かしい気持ちになるかも。なんだか、学生の頃に戻ったみたいな、そういう…」
「そうそう!そんな感じ!」
ぴんと立てた人さし指の先を香織ちゃんへ向けた私は、
「甘酸っぱいの!」
そんな言葉を付け足した。
「甘酸っぱい、って……」
香織ちゃんは苦笑いしてるけど、ぴったりだと思う。