愛かわらずな毎日が。
「せっかくだから、一緒に食べませんか」
「そうだね。じゃあ、コーヒー淹れるよ」
「ふふっ。じゃあ、私、切り分けます」
大粒の苺がならび、その隙間を埋めるようにブルーベリーとラズベリーが散りばめられたケーキに顔を近づけた私は、甘い香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
福元さんがくれた5号サイズのホールケーキは、ふたりで食べるにはじゅうぶん過ぎるほどの大きさだった。
箱から出てきたケーキを改めて見た福元さんも、これは大変だ、なんて言って苦笑いするほど。
「でも私、半分はいけそうな気がします」
そう言ったら、福元さんは目を丸くしていた。
『ケーキを丸ごと、なんて。そんなつもりはなかったんだけどね』
昨日、福元さんが教えてくれた。
私の機嫌をとるためにケーキを買おうと、たまたま打ち合わせ場所から近かった知り合いのお店に飛び込んだ。
だけど。
『閉店間際だったから、思うようなものが残ってなくて。そしたら、これを持っていけ、って言われたんだ。試作品だけど味は保証する、って。試作品?って思ったんだけど、他の店をあたる時間も惜しくて』
だから丸ごとになったんだよ、と申し訳なさそうな顔で付け足した。
そんな理由で、このケーキがここにあるのだけれど。