愛かわらずな毎日が。

「お疲れ様でしたぁ」

会社から出てきた経理部の女の子にそう挨拶をされ、肩がビクッと跳ねた。


「あ。おっ…、おつかれさま」


なんとか笑顔で返したけれど、内心ヒヤヒヤというか。


見られたら、マズイ。

特に営業部。

中でも、井沢と中里。


軽くパニックを起こした私は、みつひろの腕を掴むと、そのまま力任せに引っ張った。


「ちょ…、ちょっと、こっち。こっちに、」

「ぅおっ……、っと」

みつひろの体がぐらついたのがわかったけれど、そんなのお構いなしだ。

「イテテ…。あ、愛……!?ちょっと待って、」


「ちょっと待って、」は、こっちのセリフ。

なんで。

どうして。

あの日から一度だって会いには来なくて。

連絡も、なにも。


べつに、やり直そうとか、そんな言葉を期待してたわけじゃないけど。

そんなつもりもなかったけど。


今さら。

近くに来たから寄った、って。

時間があったから寄った、って。

フラッと会いに来るなんて。


なんなの、それ。

そんなふうに、簡単に。


「……………、」


会社から十数メートルのところまでやってきて、ようやく立ち止まった私。


さぁ、どうする?


元カレを前にして、どんな顔をしたらいいのだろう。

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