愛かわらずな毎日が。

ゴクリとのどが鳴る。

ドクドクと動く心臓のせいで息苦しい。


先ほどまで掴んでいたみつひろの腕の感触がまだ指先に残っていて、余計に混乱してしまう。


「………愛?」


沈黙を破ったのは、みつひろのほう。


「あー…。えっと、」


「……………」


「……元気?」


「……………」


「元気、だった?」


「……………」


仕方なくコクリと頷いて、視線をゆっくりとみつひろに向けた。

小首を傾げて私を見下ろしていたみつひろは、私と目が合うと、キュッと口角を上げて笑顔を見せた。


「………なぁんだ。そっか。そうだよね」


あの頃と変わらない笑顔。


難しく考えることなんてなかった。

悩むことなんてない。


あの頃と同じように接すればいいんだ。


フッと息を吐き出した私は、クイッと顎を上げてみつひろを見た。


「なんだかよくわからないけど。
まぁ、元気でやってるし。うん」


そうだよ。

私、こんな感じだった。


「あはははは。それはよかった。じゃあさ、せっかくだし。どこかでお茶でもしない?」


そうだ。

みつひろって、こういう男だった。


はじめて声を掛けられたときも、こんな感じで。


ふと、当時を思い出して懐かしいような気持ちに包まれる。

ときめいたとか、そんな感情はなかったけれど、胸の奥がジワジワと温かくなったのは確かだ。


「元カレ」なんて響きが私の中にちゃんと存在していて。

でも、それよりももっと別の。

同級生や友人と久しぶりに会ったときのような、懐かしい気持ちに近いものが私を揺さぶる。

邪険にするのはなんだか可哀想な気がした。

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