愛かわらずな毎日が。
みつひろの言葉に耳を傾ける私の心臓がドクドクと激しく脈打っている。
ゆっくりと時間が流れていく中、私だけが先を急いでいるような、そんな気がした。
「………実は、さ」
「実は、?」
「オレ、」
「うん」
「………結婚、するんだ」
「……………え、」
ドクン、と心臓が反応してしまった。
だって。
みつひろが。
みつひろが、
「………結婚、って」
「うん」
「も、しかして…………」
「例の、」
「………あ。……そっか。……そうなんだ」
「うん」
一度だけ目にしたことのある「彼女」の姿がゆっくりと浮かび上がってくる。
私より、少しばかり色白で。
私より、少しばかり胸が大きくて。
私より、少しばかり化粧の腕がいい。
憶えているのはそれくらいで。
それも、今となってはぼんやりとしたものでしかない。
「みつひろが、……結婚、」
跳ねた心臓の動きが先ほどより激しいものになっていた。
「さっき、けじめって言っちゃったけど。
そんなかっこいいもんじゃなかった。
今、気づいた」
汗をかいたグラスに手を伸ばしたみつひろがそう言って水をひとくち飲んだ。