愛かわらずな毎日が。
眉尻を下げたみつひろから視線を外した私は、ぱちぱちと瞬きをする。
自分の中に生まれた感情が、一体どれに分類されるのか。
はっきりさせたいような、させたくないような、不思議な感覚に包まれていた。
眉尻を下げたままのみつひろは、
「自分のしたことを正当化したいだけなんだ、って。……愛のことを傷つけてまで選んだあいつと一緒になることを知ってもらえたら。
愛と別れたことは間違いじゃなかったって、わかってもらえる。……そんな、ズルい考えで」
そう言うとグラスに半分ほど残っていた水を飲み干し、ごめん、と頭を下げた。
「………なに、それ」
「……………ごめん」
なんなの、それ。
心臓はまだドクドクと脈打っているけれど、頭は意外と冷静だった。
のどの渇きに気づいた私はグラスに口をつけゴクゴクと水を流し込んだ。
コトン、と音を立ててグラスを置いた私は、
「バカじゃないの?」
のどを流れる水と一緒にのみ込みそうになった言葉を慌てて吐き出した。
「おめでたい話にわざわざ面倒くさいことくっつけなくていいから」
「…………え、」
「ほんと、バカじゃないの」
みつひろの口から「結婚」なんて言葉を聞かされたときは、正直、ドキッとした。
どうしてなのか自分でもよくわからないけど。
でも、複雑なものではないことは確かだ。
みつひろの口から飛び出した言葉が意外なものだったから、とか。
ただ単に、「結婚」という言葉に敏感になってしまっている、とか。
きっと、その程度のものだと思う。
だから。
「ややこしくしなくていいの。
おめでとうって言ってくれる?って。
それくらい、言えばいいじゃない」
そう言えるんだよ。