愛かわらずな毎日が。
「愛……」
「なに?」
「おまえ、いい女になったな」
「………はぁっ!?……ちょっ、……なっ、なに言ってるの、」
「いい女になった」
「……………ぅ、」
なにを言い出すかと思ったら。
そんなこと、急に言うから。顔が。
顔が熱い。
私は、褒められることに慣れていないから。
素直に「ありがとう」と返すことにも慣れていない。
「なに、それ」
なんてことを言うんだと、みつひろをにらみつつも、返す言葉を必死に探していた。
だって。
これが最後になるかもしれない。
そう思ったから。
だから、必死に探して。
「まっ…、前からですけど。なにか?」
そんな言葉を口にした。
私の心配なんてしなくていい。
みつひろの心の中に残る私が、強い女であればいい。
そう思ったから。
私がフッと息を漏らして体を椅子の背もたれに預けると、みつひろは、
「愛が。いい女になったのは、そいつのおかげだったりするの?」
柔らかな表情で私の右手を見てそう言った。
「え?」
パッと開いた右手に視線を落とす。
「買ってもらったんだろ?」
「…………あ。」
みつひろの左手が伸びてきたと思ったら、私の右手の薬指をゴツゴツした親指と人さし指でそっと挟んだ。
「こ、…れ?」
私が訊ねると、みつひろはコクリと頷き、小さく笑って言った。
「オレは、一度もこういうの、買ってやらなかったもんな」