愛かわらずな毎日が。

じゃあねと笑ってみつひろと別れ、駅に向かう。


元カレの突然の訪問と報告に、私の心臓は未だに落ち着きを取り戻せずにいた。


結婚だって。

あのみつひろが、結婚するって。


「……………結婚、かぁ」

お決まりのようにそう漏らしてしまった。


そういえば。

福元さんと、その二文字について話し合った記憶がない。

いずれはそういう話ができればいいな、と思ってはいるけど。


福元さんは少しでも考えてくれたりするのだろうか。

私と、この先。


「………でもなぁ」


ここ最近、また忙しくしているから、そんなことを考える余裕なんてないだろうし。

交際期間が一年にも満たないことも、ひとつの原因かもしれない。


なんて。

自分の都合のいいように考えてしまったけれど。


それ以前の問題、……だったりして。


「………もしかして。私とは、」


あぁ。ダメだ。

私のいつもの悪いクセ。

悪いほうに考えてしまうから、現実もそちらへと引っ張られてしまうんだ。

わかってる。


「わかってる、……けど」

不安な気持ちを払拭するのは容易ではない。


福元さん……。今、どうしてるだろう。

メール、……じゃなくて。


できれば声が聞きたい。


昨日から出張に出掛けている福元さんとは、一昨日の夜に電話で話したきり。

それ以降、福元さんからは着信もメールもない状態。


堪らず肩にかけていたブラウンのレザーバッグの中からスマホを取り出した。

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