愛かわらずな毎日が。
「ふぁぁぁ」
本日、何度目のあくびになるだろう。
手にしていたファイルで口元を隠してはいたものの、漏らした息が予想以上に大きくて、思わず苦笑いしてしまう。
「午後だけで12回、ですよ」
「えっ?」
驚いて声のした方を見ると、少しばかり不機嫌そうな表情で私を見下ろしていた森下と目が合った。
「………あんたってヤツは」
いちいち数えなくてもいいのに、と付け足した私にクリップボードを差し出した森下。
「田辺部長に渡されたんですけど。今月は間宮さんの当番月なんで」
そう言うと、早く受け取れと言わんばかりにクリップボードを私の顔の前に突き出す。
真近で見る、“備品在庫管理表”の文字。
「あぁ、そっか。そうだっけ」
「さっさと済ませて戻ってきてくださいね。
そのあとにお願いしたい仕事があるんで」
「……………」
「はい、どうぞっ」
「……………」
少しばかり、ではなく、かなり機嫌の悪そうな森下から面倒な仕事を受け取ると、今度はあくびではなく大きなため息を吐いて席を立った。
「ふぁ……」
営業部のフロアに向かう途中でもう一度あくびをした私。
あくびの原因は、もちろん寝不足。
みつひろに会ったせいか。
福元さんの声を聞いてしまったせいか。
昨夜は気持ちが高ぶって、なかなか寝つけなかったのだ。
……いや。福元さんは悪くない。悪くないです。
全部、みつひろのせい。
そういうことにしておこう。
「それにしても、……眠い。……ふぁ、」