愛かわらずな毎日が。

「時間、大丈夫なんですか?」

早く出掛けたほうがいいですよ、と言わんばかりに腕時計を見た私。

けれど、佐伯さんは慌てるどころか、

「あ、そうだ。愛ちゃんに訊きたいことがあったんだよね」

なんて。

「お茶でも飲みながら、おしゃべりしない?」とでも言い出しそうな様子に、思わず苦笑いしてしまった。


「私に訊きたいこと、って?」

どうせ大したことじゃないんだろうけど、と思いながら小首を傾げて尋ねると、佐伯さんは細めていた目をゆっくりと元のかたちへと戻した。

奥二重ではあるけれど、クリッとした目が真っ直ぐ私に向けられる。

佐伯さんの、普段は殆どと言っていいほどお目にかかることのない真剣な表情に、私の心臓が僅かに動きを速めた。


クリップボードを持つ手に自然と力が入る。

口角を上げようと動かした頬がピクピクと痙攣したみたいに震えてしまった。


「あの、」

「間宮さんて、彼氏いるんですか?」


「……えっ?」


佐伯さんの口から、想像もしていなかった言葉が飛び出した。


それは、どういう意味?

だって。佐伯さんは知ってるじゃない。

私と、……。


「この前の、営業部の飲み会のときにそう訊かれたんだ。誰に訊かれたのかは記憶にないんだけどね。俺、すげー酔ってたからさ」

佐伯さんはそう言うと、いつものように目尻にシワを作り、あはは、と笑った。

でも。

その笑顔を素直に受け取ることができなかった。


「福元と付き合ってること。いつまで内緒にしておくの?」

佐伯さんがそう続けたから。

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