愛かわらずな毎日が。

営業部の部屋に足を踏み入れた私は、はぁっ、と大きく息を吐き出した。


「そんなこと言われても、」


寝不足の頭では考えがまとまらない。

ただ、佐伯さんの言葉が繰り返し流れるだけだ。


『福元と付き合ってること。いつまで内緒にしておくの?』


今までそんなこと、ひとことも口にしなかったくせに。

急に言われても、なんて答えたらいいかわからないじゃない。


……でも。

だとしたら。


福元さんは、どう思ってるんだろう。


福元さんは何も言わないけど、佐伯さんと同じことを思ってたりするのだろうか。


チラリと見た福元さんの机の上は、昨日と同様、ファイルが山積みになっていて、空いていたはずのスペースはメモ用紙で埋め尽くされていた。


受話器片手に一枚一枚メモを剥がしていく福元さんの姿を想像して、胸がきゅっと締めつけられた。


いろんな意味で。いろんな想いで。

胸が、きゅっと締めつけられるように痛んだ。



「スーッ……、ハァーッ」

部屋の隅に置かれた薄いクリーム色のロッカーの前に立ち、深呼吸を繰り返す。

いろいろと頭を悩ませたいところだけど、早く戻らないと森下になにを言われるかわからない。

「仕事、仕事」

そう呟いてロッカーの前で腰を屈めた。

そのとき。


「あのー……、」


誰も居ないと思っていたはずの部屋に突然響いた声。


「ひゃっ、」

心臓がビクンと反応した反動で、手にしていたクリップボードを落としてしまった。


………これで二回目だ。

佐伯さんの次は、一体、誰?

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