愛かわらずな毎日が。
恐る恐る声のした方を見ると、部屋の隅に設けられた給湯室からこちらの様子を窺うように覗かせた顔が目に留まった。
「すみません、驚かせちゃって。………あ。
お疲れ様です」
黒髪をふわりとセットした、見るからに好青年の彼、青山さんがペコリと頭を下げる。
「……びっ、くりした。……あ。お疲れ様です」
青山さんにつられるように私もペコッと頭を下げた。
中途採用で、この4月から営業部に籍を置くことになった青山さん。
歳は、確か私のひとつ上。
森下から、
「引き抜きらしいですよ」とか。
「どこの部の部長かはわからないけど、親戚らしくて。コネで入ったらしいです」とか。
曖昧な情報は聞かされてきたけど、真相は今もわからないまま。
「あの、……ちょっと、教えていただきたいことが、」
「あ、はい。すぐ行きます」
私は拾い上げたクリップボードをロッカーの上に置き、急いで給湯室へと向かった。
「坂口部長から、ここは好きに使っていいって言われたんですけど。よくわからなくて……。
お忙しいところ、申し訳ないです」
「いいえ。気にしないでください」
給湯室に入るなり、どのカップを使ったらいいのか教えてほしいと言われた私は、給湯室に設置されているダークブラウンの食器棚から白いマグカップを取り出した。
「この種類のカップは自由に使ってもらって大丈夫です。こっちに並んでるカップは各自持ち込んだものなので、………って、」
とある事に気づいて手を止めた私に、青山さんが遠慮がちに声をかけてきた。
「あの、……間宮さん?」